未来に向けて
プラスチック容器包装の資源循環・リサイクル活動
これからの素材:再生プラスチック
再生プラスチックの需要・利用の動向
2019年に策定された<プラスチック資源循環戦略>では、基本原則を<3R+Renewable>として、3R中心から、資源循環を軸にした循環政策に転換する方向を示し、その基軸のひとつがプラ資源の循環と新素材の利用の拡で、Renewable素材と位置付けられたのが、バイオプラスチック(バイオプラ)と再生プラスチックです。
この戦略では、再生プラスチック(再生樹脂)の利用拡大を通して、循環型社会の構築への推進を目指しています。再生プラスチックには、生産・流通工程などで発生する廃プラを原料とする産業廃棄物由来のリサイクル材(PIR材)と、家庭ごみなど一般廃棄物由来のリサイクル材(PCR材)の2種があります。
このうちPIR材由来の再生プラスチックは、50年以上も前から再生樹脂として産業分野などで利用されていますが、未利用のPIR材も多く、その利用拡大が課題です。
また、PCR材由来の再生プラスチックは、その多くが排出時に複数の樹脂製品等が混在し、汚れや異物も多く、前処理などが必須であるなど課題があり、その利用拡大を図ることが、プラスチックの資源循環を進めるための最大の課題です。
なお、ISO15270に示されたプラスチックのリサイクル手法は、下図のとおりで、マテリアルリサイクルを物質回収としており、メカニカルリサイクル(容リ法では材料リサイクル)や、ケミカルリサイクルなどとして分類されている。
これに従って日本リサイクル手法を考えると下記のように分類できる。
- 材料リサイクル
=同じ材質の樹脂を、熱で溶かしてプラスチックの材料や製品に再生する方法 - ケミカルリサイクル
=熱やガス等を使い、化学的な方法で分子に戻してから化学原料や、プラスチックの原材料・製品に再生する方法。 - エネルギー利用は、サーマルリカバリー
=物質回収ではなく、エネルギー回収とされ、リサイクルではなく、熱エネルギーとして利用する方法
本稿でいうリサイクル材は、材料リサイクル手法で再生利用されている材料について紹介する。
廃プラスチックの排出、再生利用
プラスチック循環利用協会が、毎年纏めているプラスチックのマテリアルフロー図の2022年度版(図1)によると、廃プラの総排出量は823万㌧(産業廃棄物が399万㌧、一般廃棄物が424万㌧)で、うち使用済製品由来が759万㌧、生産・加工ロス由来が64万㌧とのことで、使用済製品の排出量が多いことが分かります。
使用済製品には、家電、小型家電、自動車や容器包装、日用品・雑貨などがあると見られますが、家電や小型家電、自動車など産業廃棄物系の製品類は、個別のリサイクル法でリサイクルの取組みが進んでいます。また、容器包装や日用品・雑貨など一般廃棄物系の製品類は、容器法包装リサイクル法やプラスチック資源循環推進法によってリサイクルが進められています。
再生プラスチック・リサイクル材の製造
廃プラの総排出量のうち、マテリアルリサイクル向けとして処理・処分されている、いわゆる再生利用(リサイクル材)向けの廃プラは、2022年度は合計で180万㌧でしたが、そのうち一般廃棄物由来は71万㌧(構成比40%)、産業廃棄物由来は109万㌧(同60%)でした。
これら再生利用向けの廃プラのすべてがリサイクル材に再生されるのではありません。再生利用71万㌧は、自治体が収集した分別基準適合物で、各自治体は容器包装リサイクル協会に再商品化向けに供給しています。2022年度の容リ協会はリサイクラーに委託して製造されたリサイクル材は、材料リサイクルが17.2万㌧、ケミカルリサイクルが25.7万㌧で、リサイクル率は60%です。なお、ケミカルリサイクルでの再生品はリサイクル材だけではなく、化学製品も含まれます。
リサイクル材生産・取扱量 2020年10月
生産数量 | 取扱い数量 | |
---|---|---|
オレフィン系 | 299,104 | 447,421 |
スチレン系 | 38,327 | 131,321 |
その他 | 46,673 | 187,504 |
小計 | 384,104 | 766,246 |
出典:全日本プラスチックリサイクル工業会 HP
再生利用向け分からリサイクル材に再生された、いわゆるマテリアルリサイクル材の製造量は、前述のとり、PCR材が19.2万㌧(容リ協会HP)でしたが、PIR材の製造量は、統計がなく、正確な数値は不明ですが、産廃由来の廃プラを主にリサイクルしているコンパウンド事業者によるPIR材の製造量は38.4万㌧、取扱量は76.6万㌧(全日本プラスチックリサイクル工業会調べ)でした。これは、PIR材由来の再生利用の35%(製造量)でした。
こうした統計から、リサイクル材に再生されていない廃プラの量は、一般廃棄物、産業廃棄物ともに、まだまだ相当量あると考えられ、今後リサイクル材の利用を進めていくには、こうした未利用廃プラの活用を進めることが重要です。
2022年度 プラスチックのマテリアルフロー図
出典:(一社)プラスチック循環利用協会
容リプラのゆくえ
出典:(公財)日本容器包装リサイクル協会HP
プラスチック・再生リサイクル材の課題
これまでのリサイクルプラスチック材は、排出源や排出状況、排出量が安定し、把握されている物性等が比較的安定しており、増量材などとして活用できる、安価である、などの理由で、主に産業材料や日用品・雑貨用などに使われていました。
しかし、これまでのリサイクル材の利点である<物性や数量が安定した安価な材料>を維持しながら、供給量を拡大するには、いくつかの課題をクリアすることが必須となります。
その背景には、廃プラの確保が難しい、生産・加工ロス量が減少しているなどの理由に加えて、物性の向上や未利用廃プラの活用推進などの課題があります。
これまで、リサイクル材として使われてきたのは、PP、PE、PS、ABS、PCなどの樹脂でしたが、未利用廃プラを活用するには、排出元の確保や収集ルートの確保、リサイクルの難しい廃プラの利用や材料物性の向上の技術開発などの課題があります。
また、リサイクル材を製造する技術が、これまでのマテリアルリサイクル手法だけでなく、ケミカルリサイクル手法によるリサイクルの実用化なども想定されています。
新たなしくみつくりが重要
今後、プラスチックリサイクル材の利用を拡大している上で、新たな課題は、排出時、収集時の在り方を見直し、リサイクル材の量の増加と質の向上を支える、プラスチック資源循環システムを構築することです。
経済産業省や環境省では、2030、2050年に向けたプラスチックなどのリサイクルシステムの構築に向けて、新たな法制化や様々なしくみの構築を進めており、動脈と静脈産業との連携や自治体との協力、新たなリサイクル技術などの開発と社会実装を進めていくことが必須と考えられます。