未来に向けて
プラスチック容器包装の資源循環・リサイクル活動
これからの素材:バイオプラスチック
バイオプラスチックの開発・利用の動向
2019年に、環境省は<プラスチック資源循環戦略>を策定しました。その戦略の基本原則を<3R+Renewable>として、リデュース、リサイクル、再生材・バイオプラなど6つの重点戦略を策定しました。これまでの3R中心から、資源循環を軸にした循環政策に転換しました。その基軸がプラ資源の循環と新素材の利用の拡大です。こして重点戦略でRenewable素材への転換位として、バイオプラスチック(バイオプラ)再生材(リサイクルプラスチック)です。
この戦略では、バイオプラ(バイオプラスチック)を、植物などの再生可能な有機資源を原料とするバイオマスプラスチックと、微生物等の働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する生分解性プラスチックの総称、としています。
バイオマスプラスチックには、生分解性を持たないタイプと、生分解性を有するタイプに大別され、化石資源由来のプラスチックにも生分解性を有するタイプもあります。
これらの素材は、原料、製法、化学構造や機能が様々ですので、それぞれの素材の特徴を正確に理解して、目的に応じて適切な用途に使用することが重要です。
環境省、経済産業省、農林水産省、文部科学省が共同で作成した<バイオプラスチック導入ロードマップ>(https://www.env.go.jp/recycle/plastic/bio/roadmap.html)では、プラスチック資源循環戦略に基づいて、バイオプラスチックに関係する幅広い主体に向けて、持続可能なバイオプラスチックの導入方針と導入に向けた国の施策を示しています。
今後は、このロードマップを国内外に発信していくとともに、導入に向けた取組を積極的に展開し、気候変動問題・海洋プラスチックごみ問題の解決や、プラスチック資源循環の実現を目指していくとしています。
バイオマスプラスチックの生産量は、2021年現在でバイオマスプラスチック87万トン、生分 解性プラスチック155万トン、計242万トンの生産能力があると推定されています。
また、バイオプラスチックの製造量は、UBP(欧州バイオプラスチック協会)によると、世界のバイオプラスチック製造能力は241万トン(2021年)から今後5年間で約3倍の759万トンに増える見込みです。
出典:European Bioplastics, Bioplastics market data 2018
出典:バイオプラスチック導入ロードマップ
一方、日本のバイオプラスチックの出荷量は、2018年度のバイオマスプラスチック製品の国内出荷量が8.4万トン、そのうちバイオマスプラスチック量は4.7万トンである。樹脂別にみると、セルロース系、バイオPE、バイオPET、コンポジット系、バイオPA、PLAの順に出荷量が多かったようだ。
出典:日本バイオプラスチック協会
出典:バイオプラスチック導入ロードマップ
なお、2022年8月時点で国内のプラスチック市場に占めるバイオプラスチックの割合は0.4%ほどとなっており、プラスチックに比べて製造コストが高く、耐久性が低いバイオマスプラスチックは、まだ普及が進んでいない状況です。
また、バイオプラスチック導入ロードマップに示された主なバイオプラの種類は、下図のとおりです。
なお、バイオマスプラスチックの定義について、日本バイオプラスチック協会(JBPA)では、バイオマスプラスチックを「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的又は生物学的に合成することにより得られる高分子材料。」と定めています。
出典:(一社)プラスチック循環利用協会
出典:日本バイオプラスチック協会
バイオマスプラスチック(非生分解性)は、ポリエチレン(PE)、ポロプロピレン(PP)などの汎用樹脂やポリカーボネート(PC)など高機能性樹脂などがあります。
バイオPETのように、部分的にバイオマス由来になっているものなど、新規樹脂の研究・開発が進んでいます。
バイオマスプラスチック(非生分解性)の主な製法は2種類です。
○発酵法…サトウキビやトウモロコシ等の糖や油脂などの植物原料を発酵させて得られるエタノール等の中間原料から樹脂を合成する手法
○化学合成法…糖や油脂などの植物原料から樹脂を化学合成する手法
化学合成法には、廃食用油、製紙工程の副生成物(トール油)などを原料に、バイオナフサを製造し、化石資源由来ナフサと混合して樹脂を製造する手法もあります。
バイオプラの物性については、従来の化石資源由来プラスチックと使用時の機能や使用後のフローにおけるリサイクル調和性がほぼ同じであり、既存の製品製造にそのまま使用することに課題が少ないとされています。そうした物性を反映してレジ袋や軟包装材や食品容器等、身近な用途での利用が広がっています。
また、再生可能性については、化石資源由来のプラスチックに比べて、バイオマスプラスチックは、比較的短いサイクル( 1~10年)で再生産することができる植物等の再生可能資源を使用しています。
また、生分解性プラスチックとは、生分解機能を有する素材ですが、単にプラスチックがバラバラに崩壊する性質ではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水になって自然界へと還元し、循環していく性質をいいます。
生分解性プラの生分解度は、国際的に規定された試験方法と、定められた基準により審査されます。さらに、重金属等の含有物、分解過程(分解中間物)での安全性などの基準をクリアした製品だけが、生分解性プラマークをつけることができます。(バイオプラ協会資料から)
生分解性プラスチックには、化石資源を原料とするものとバイオマスを原料とするものがあります。バイオマスプラスチック(非生分解性)同様に、部分的にバイオマス由来になっているものもあります。
海洋プラスチックごみ問題の解決に向けては、やむをえず自然環境中に流出する用途については、生分解性機能を有することが望ましく、今後とも更なる技術発展が期待されている領域になります。
日本国内で普及している生分解性プラスチックの約7割はバイオマス由来ですが、ほかにも化石資源由来の素材もあります。製法は、バイオマスプラスチックと同様に、発酵法と化学合成法があります。
生分解性プラスチックが生分解される際には、一般的に微生物の酵素の働きなどで高分子が断片化された後、微生物の働きCO2と水に代謝されますが、完全に分解していなければ、マイクロプラスチックとして自然環境中に流失する可能性があります。
生分解性プラスチックは樹脂ごとに生分解性の能力(分解温度、分解時間も含む)が異なるので、生分解性を十分に発揮するためには、工業コンポスト、家庭コンポスト、土壌、海洋等の様々な分解環境に適した生分解性プラスチックを選択することが重要で、プラスチックの種類や添加剤などの構成材料が適切な生分解性を備えていることが必要です。(バイオプラ協会資料から)
生分解性プラスチックのライフサイクル
出典:日本バイオプラスチック協会
出典:日本バイオプラスチック協会